「カメラを止めるな」の盗作疑惑について(追記あり) | 忍之閻魔帳

忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)



 

ビデオパス FODプレミアムロゴ

★「ビデオパス(au)」月額562円で映画・ドラマが見放題

★「FODプレミアム」月額888円でドラマ・バラエティが見放題

★「Hulu」映画・ドラマが月額933円で見放題。無料視聴体験受付中

★「dTV」12万作品が月額500円で見放題。無料視聴体験受付中

★「Amazonプライム」動画、音楽、写真も使い放題 30日間無料体験

 



▼「カメラを止めるな」の盗作疑惑について

 

【紹介記事】映画「カメラを止めるな」技ありなれど傑作ではない

【関連記事】『カメラを止めるな!』はパクリだ!原作者が怒りの告発

【関連記事】映画「カメラを止めるな!」について

 

ネットでの口コミから拡大公開へ、監督を始め関係者のテレビ出演と

社会現象化している映画「カメラを止めるな」について

案の定というか、盗作疑惑が持ち上がっている。

制作費300万円の超低予算映画は8月19日の時点で累計興収8億円を突破しており

関係者は全員宝くじに当たったような気分だろう。

 

声をあげたのは、2011年から2014年まで劇団「PEACE」を主宰していた和田亮一氏。

氏の演出した舞台「GHOST IN THE BOX!」と

舞台設定、構成、一部台詞もそのまま使用されていると主張。

ちなみに、「GHOST〜」の脚本を書いたのは和田氏ではなくA氏。

劇団「PEACE」が2014年に解散した後、

2015年に上田慎一郎監督が別の劇団関係者と接触し映画化を企画するも頓挫、

2016年に再度映画化を企画した際、上田監督がA氏の脚本を

大幅に書き替えることで「オリジナル作品」として完成させた。

「GHOST〜」は2011年に初演、2013年には再演もされた人気の舞台。

上田監督はこの再演版を鑑賞したこと、舞台にインスパイアされて

「カメラを止めるな」の本を書いたことまではメディアのインタビュー等で認めている。

問題は、そこまで認めていながらエンドロールに事実上のオリジナルである

「GHOST〜」や脚本を書いたA氏、演出の和田氏への言及が無かったこと。

和田氏がクレジットを入れて欲しいと上田監督に訴えたところ


「確かに最初は一緒に進めたし、あの舞台を参考にしたが

それは一旦頓挫し最終的には全く別物になったので「原作」と入れることはできない。

参考にしたということでいくと、

三谷幸喜さんの作品も原作としていれなきゃいけないことになる。」

 

と回答が来たという。

監督が態度を硬化させたため、和田氏はプロデューサーに連絡を取り、

拡大公開のタイミングで「原案」としての表記ではどうかとの妥協案を提示される。

さらに後日、先方から「GHOST〜」が今回の映画における

原案であることを認めると同時に、和田氏は今後リメイクや二次利用に関する

一切の権利を有しないとする書類が届いたとのこと。



 

発売中■DVD:ラヂオの時間

配信中■Amazonビデオ:ラヂオの時間

発売中■DVD:ショウ・マスト・ゴー・オン 幕を降ろすな

 

当BLOGで紹介した時にも

 

「ストーリーには技ありの面白さがあるし、

これを本当に300万で作ったのであれば、

”枯れた技術の水平思考”(@横井軍平)的なひらめきに感心もする。

が、あくまでも技ありであって、革新的なわけではない。

現在の熱狂ぶりはやや過大評価ではないか。」

 

と書いた。

生放送の緊張感とドタバタから生まれる笑いを描いた映画と言えば

三谷幸喜が初監督を務めた「ラヂオの時間」がほぼ完成形として存在しているし、

もっと言えば三谷氏が主宰を務める東京サンシャインボーイズの

舞台「ショウ・マスト・ゴー・オン 幕を降ろすな」は

生の舞台のドタバタを描いたコメディで、「ラヂオの時間」の元ネタと言っていい。

何よりサブタイトルの「幕を降ろすな」(流れを止めるな)は

映画のタイトル「カメラを止めるな」と同じ意味である。

 

声をあげた和田氏には申し訳ないが、上田氏が三谷氏を引き合いに出して

「先祖を辿ればキリがない論」で切り抜けるのはちょっと苦しいし、

かと言って和田氏が権利を主張するほど、このストーリーや構成は斬新ではない。

和田氏の目的が金銭であれ名誉であれ、映画「カメラを止めるな」が

10億突破も見えた大ブームになっていなければ

おそらくこの問題は起こっていなかったはず。

陽の目を見さえしなければ騒がれなかったという意味では

ブルゾンちえみのキャリアウーマンネタが某エッセイからの引用だと騒がれたのと

問題の質が似ている気がする。

 

和田氏について金銭トラブルを抱えているとの噂もあったり

映画の公開当初には手放しで喜んでいたとするツイートが掘り返されたりと

「金銭目的ではない」との主張が疑わしい部分はあるし、

関係者全員が権利に対しての認識が緩いあたり、いかにも小劇団同士のいざこざといった感じ。

後になって声をあげるのであれば、なぜ原案表記ではどうかとの提案を

すんなり受け入れてしまったのかも良くわからない。

二次使用やリメイクを禁じられるとは思っていなかったのだろうか。

 

【紹介記事】「反戦」×「芋虫」×「死んだ女の子」=映画「キャタピラー」

 

原作と原案については、傍から見ると大差ないように思えるが

権利や発生する金銭においてはかなり異なっている。

例えば、故・若松孝二監督が撮った「キャタピラー」は

江戸川乱歩の「芋虫」をそのまま映画化しようとしたが

乱歩の遺族から提示された権利料が高額だったため

脚本を書き替えてオリジナル作品として発表したこともある。

(監督がティーチイン試写で話していたので噂や伝聞ではない)

中身はどう見ても「芋虫」だったが、一部書き換えさえすれば

原作ではなく原案になり、権利料を支払う必要がなくなるのかと驚いたのを思い出した。

 

わずか2館から始まった「カメラを止めるな」は

今や「コードブルー」や「ジュラシックパーク」と並び

シネコンでも最大規模のスクリーンで上映されている。

興収は今後まだまだ伸びるだろう。

儲かれば儲かるほど、この問題は尾を引きそうな気もするので、

関係者はなるべく早急に、穏便にことを収めていただきたい。

 

【追記】

 

★『カメラを止めるな!』クレジット問題が終結 和田氏・上田監督の共同原作に

 

今後の表記は

 

「共同原作:和田亮一/上田慎一郎」

「企画開発協力:荒木駿/大坪勇太(劇団PEACE)」

「Inspired by:『GHOST IN THE BOX!』(和田亮一/劇団PEACE)」

 

となることで落ち着いたようだ。

 

【紹介記事】映画「カメラを止めるな」技ありなれど傑作ではない

【関連記事】「カメラを止めるな」の盗作疑惑について

 

当BLOGでも何度か取り上げてきた本作は、

「それほど斬新なわけでもないのに何故こんなに騒がれているのか」と

ずっと疑問に思っていた。

映画興行も終了し、数々の映画賞を獲得して

設定をそのまま流用したテレビCMやバラエティ番組でのミニドラマを製作し、

ヒットの恩恵がほぼ出尽くして盗作問題も鎮静化たところでの和解は

なんとなくやり逃げ感も残る。

次回作のハードルはさらに上がったことだろう。