今週の映画「さよなら。いつかわかること」「パラノイドパーク」、他 | 忍之閻魔帳

忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)

▼今週の映画「さよなら。いつかわかること」

さよなら。いつかわかること
(c) 2007 The Weinstein Company, LLC. All rights reserved.

今週は地味目な2本を紹介。
まずは「さよなら。いつかわかること」から。

シカゴで暮らすスタンレーのもとに訃報が届いた。
亡くなったのは、イラクに出征中の妻グレイス。
12歳と8歳の娘にどう告げるべきか、
突然の不幸を前に、ただ狼狽するだけのスタンレー。
考えあぐねた末、スタンレー自身の心の整理も兼ねて
次女が行きたがっていたフロリダの遊園地へ
長距離ドライブの旅に出ることにした。

主演は、「アドルフの画集」「アイデンティティー」のジョン・キューザック。
監督は、本作が監督デビューとなるジェームズ・C・ストラウス。
音楽は、今やハリウッドの至宝とも言われるクリント・イーストウッド。
「硫黄島からの手紙」「ミリオンダラー・ベイビー」などに通じる
静かで美しく、少し哀しい旋律を提供している。




命を落としたのが、家庭を持つ女性であるという視点は
これまであまり取り上げられたことがなかったと思うのだが、
実際にイラクに出征している米兵の約15%が女性であり、
そのうちの約40%が子を持つ母親であるという。
この物語は、決して「if」の話ではないのだ。

ジェームズ・C・ストラウス監督の演出は
良く言えば基本に忠実、悪く言えば面白味がなく
シナリオも練り込み不足感は拭えない。
打ち上げ花火のような厭戦映画にしたくなかったという
意思表示とも取れるが、それにしてももう少し欲張って
監督の主張というものを入れても良かったような気がする。

失った妻の大きさを今更ながらに思い知り、
幼い娘2人を前にして父親としての在り方を考える
スタンレーをジョン・キューザックが好演。
喰い足りなさは残るものの、
ドンパチ映画では伝わらない戦争の爪痕を描いた良作。

▼今週の映画「パラノイドパーク」

パラノイドパーク
(c)2007mk2

今週はもう1本。
「エレファント」のガス・ヴァン・サント監督最新作。

スケボー好きなアレックスは、どこにでもいる少年。
ボーダーの集まる「パラノイドパーク」は、まだ16歳のアレックスにとって
憧れの場所ではあるが、劣悪な家庭環境から逃れて来た連中が
集まっていることもあり、単身で乗り込むには少々怖いところでもある。

ある日、「パラノイドパーク」で不良グループに声をかけられたアレックスは
悪戯半分で列車に飛び乗って遊んでいた。
しかし、その現場を警備員に発見されてしまう。
慌てて逃げようとしたアレックスが警備員を振り切ろうとした時、事件は起きた。
監督は「エレファント」「ラストデイズ」のガス・ヴァン・サント。
主人公アレックスは、本作が映画デビューとなるゲイブ・ネヴァンス。


ガス・ヴァン・サント作品は、監督の長編デビュー作である
「ドラッグストア・カウボーイ」から何作か観ているのだが
「エレファント」以降の作品は、悲劇に見舞われた青年や
犯罪に手を染めてしまった少年の心を汲み取ることに
ひたすら情熱を注いでいるように感じる。

本作も「エレファント」とほぼ同じ手法を用いて
少年アレックスが抱える、言葉にならない空虚さや
人を殺めてしまった後の焦りなどを上手く映像化している。
ただ、意地の悪い見方をすれば「エレファント」から
取材対象を変えただけと言えないこともなく、
「エレファント」の手法を借りた「明日、君がいない」という
発展型の作品も存在するだけに、若干食傷気味。
若さやインパクトという点では、主人公と同世代の監督が描いた
「明日、君がいない」の方が圧倒的だ。

【紹介記事】「明日、君がいない」


■DVD:「明日、君がいない」
■DVD:「エレファント デラックス版」

▼今週発売のDVD


■DVD:「カンナさん大成功です! 特別版」

今週はゲーム系の新作はないのでDVDのみ簡単に紹介。

「カンナさん大成功です!」は鈴木由美子の同名コミックの映画化。
日本のコミックが韓国で映画化と聞くと
「オールドボーイ」を思い浮かべる方も多いと思うが、
本作も「オールドボーイ」に続きなかなか上手く映画化されている。

声量や歌唱力では文句無しながら、ルックス(体型)に難ありのため
ステージ裏でスターの影武者として歌手を続ける主人公が
密かに憧れていた男性が自分の陰口を叩いていたところに遭遇し
全身整形で人生の再出発を狙うコミカルなラブストーリー。

日本よりも整形手術が身近にある韓国ならではのリアリティと
日本以上にオーバーアクションな演出や演技が
原作の雰囲気とマッチして非常に楽しい。
拡大公開されていないので知名度は低いと思うのだが
「ヘアスプレー」あたりをお気に召した方ならかなりお勧めだ。


■DVD:「のだめカンタービレ in ヨーロッパ」

「のだめ」のSP版。
タチヤーナ役のベッキーとフランク役のウエンツ瑛士がかなりツボ。

▼「ゲームになった映画たち」発売中


■Book:「ゲームになった映画たち シネマゲーム完全読本」

映画にゲームが近づいたのか、ゲームに映画が歩み寄ったのか。
映画のゲーム化やゲームの映画化が相次ぐ中、
これまでの流れを膨大な資料を元にまとめた興味深い1冊。
映画界からは、クエンティン・タランティーノやピーター・ジャクソン、
ゲーム界からは小島秀夫氏や須田鋼一氏などのインタビューが収録されている。
4月30日発売。

●本作に登場するもっと詳しい作品・人名リストはこちら。





■CD:「世界樹の迷宮II 諸王の聖杯 スーパー・アレンジ・バージョン」
■ETC:「ツンデレ百人一首 オリジナル百人一首付き」
■DVD:「のだめカンタービレ in ヨーロッパ」