私にも1着下さい。映画「ハンサム★スーツ」 | 忍之閻魔帳

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ハンサムスーツ
(C)『ハンサム★スーツ』製作委員会
■DVD:「ハンサム★スーツ スペシャル・エディション 初回限定チェンジング仕様」

ハンサム・・・。
今や半ば死語と化した、古き良き時代の褒め言葉である。
小栗旬や水嶋ヒロや三浦春馬にハンサムという褒め言葉は似合わないが
石田純一やジローラモや別所哲也なら、ハンサムで差し支えなかろう。
ハンサムとは、もうそういう言葉になってしまったのだ。

「ブサイクな男が青山の特製スーツを着ると、とびきりのハンサムになる」

このバカバカしい設定を実写映画化した場合、
とびきりのハンサム役は誰がやるのか。
そこで白羽の矢が立ったのが、谷原章介である。
スチールの中で塚地の横でポーズを決める彼は、
「オー!マイキー」のパパような、朗らかなハンサム男として立っている。
今回は、役者・谷原章介の底力を見せつけられる「ハンサム★スーツ」を紹介しよう。

ハンサムスーツ
(C)『ハンサム★スーツ』製作委員会
■DVD:「ハンサム★スーツ スペシャル・エディション 初回限定チェンジング仕様」

■YouTube:「ハンサムスーツ 予告編」

母の後を継ぎ、良心的な値段で美味い飯を食べさせてくれる
食堂を営む心優しい青年、”豚郎”こと琢郎(塚地武雅)。
彼の店はいつも満員の客で繁盛していた。
しかし、彼には重大な悩みがあった。
それは自分が不細工なこと。
33歳にもなって未だに女性と縁遠い琢郎は、
自分は一生女性と縁がないものと諦めていた。
ある日、友人の結婚式に出席するためスーツを新調しに
「洋服の青山」に出掛けた琢郎は、青山の店長からあるスーツを勧められる。
それは、着ただけでハンサムになれる夢のスーツ「ハンサムスーツ」。
半信半疑の豚郎が試着してみると、鏡の向こうに驚くほどのハンサム(谷原章介)がいた。
豚郎はスーツを着た時だけ光山杏仁と名乗り、夢のモテモテ生活を開始。
やがてモデル事務所からも声がからり、杏仁の人気は本格的なものとなっていく。
脚本は「ブスの瞳に恋してる」の著者であり、森三中・大島の夫でもある鈴木おさむ。
監督は、これがデビューとなるCMディレクターの英勉。


2008年の日本において、谷原章介以上のハンサムはいない。
観終えた後、多く人がそう思うであろう。
ルックスは整っているはずなのに、どこかがおかしい。
けれどどんな台詞を吐いでも、どんな動きをしても、絶対に下品にならない。
少女マンガの世界を実写映画で見事に表現して見せた
「ラブ★コン」の製作スタッフだけあり、
この映画の谷原章介は、かつて「花より男子」(1995年度版)で
道明寺司を演じた頃より、遥かに輝きを増したマンガキャラとして存在している。
脚本の鈴木おさむは、谷原と塚地のキャスティングを
「日本のヒュー・グラントとジャック・ブラックだと思って書いた」と
コメントしているのだが、確かにこの映画の持つ華やかさ、
後腐れのなさは、邦画というより洋画のコメディに近いかも知れない。

私がこの映画を気に入った大きな理由は、この手の話によくある
「人は見た目ではない」という安直な結論で終わっていないことである。
主人公の琢郎は、「人は見た目」という価値観のために、ずっと辛い人生を送って来た。
ハンサムスーツを着ているほんの束の間、その呪縛から解放されているだけで
脱いでしまえば、また冴えないブサイク男へと戻ってしまう。
現実からは決して逃れられない。
逃れられないなら、どうすれば良いのか。
定番のハッピーエンドへ着地する物語ではあるが、
そこに辿り着けたのは、琢郎自身が自分という存在を受け入れたことが大きい。
「人は見た目」を完全否定するのではなく、
「人はやっぱり見た目だけど、それよりもっと大切なものがある」ことに気付く
琢郎の人間的な成長こそが、この作品の肝になっている。

ハンサムスーツ
(C)『ハンサム★スーツ』製作委員会
■DVD:「ハンサム★スーツ スペシャル・エディション 初回限定チェンジング仕様」

琢郎の人生観を大きく揺るがす存在として登場する橋野本江役を、
森三中の大島美幸が好演している。
特に、本江と琢郎が公園で写メを撮りながら歩くシーンは出色。
私的には、本作における大島は、「フラガール」で無口な小百合を演じた
南海キャンディーズの静ちゃん(山崎静代)クラスのインパクトがあった。

ギャグのセンスがかなり人を選ぶものであること、
BGMの選曲が明らかにR35世代をターゲットにしていること、
食堂のデザインまでマンガ風にしたことで、生活感が薄くなってしまっていることなど、
細かな難点はいくつかあるものの、
2時間笑ってハイ終わり、という潔さは、今の日本映画ではなかなか貴重。
予告編を見て「これは面白そうだ」と感じた方なら劇場へ。

そうそう、エンドロール後にもう少しだけ「おまけ」があるので
「My Revolution」は最後まで聴くべし。

▼関連商品


■DVD:「ラブ★コン」
■DVD:「下妻物語 スペシャル・エディション」
■DVD:「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」

実写版「The・かぼちゃワイン」(古)のような「ラブ★コン」は
「ハンサム★スーツ」スタッフが手掛けた作品。
キラキラを使いまくりの演出法など、本作への共通点も多い。
ドタバタギャグ的な展開は「下妻物語」や
「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」あたりに近いか。


■DVD:「カンナさん大成功です! 特別版」
■DVD:「ペネロピ」

整形して男を見返そうとする女性を主人公にした「カンナさん大成功です!」や
豚鼻を持って生まれてしまった少女「ペネロピ」は
どちらも「自分を好きになる」ことを描いた作品。
本作にも共通する部分があると思ったので挙げてみた。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:ハンサム★スーツ
    配給:アスミック・エース
   公開日:2008年11月1日
    監督:英勉
    出演:谷原章介、塚地武雅、北川景子、佐田真由美、他
 公式サイト:http://www.handsome-suits.com/
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